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「寒蝉」はヒグラシ? ツクツクボウシ? [日刊☆こよみのページ]

■「寒蝉」はヒグラシ? ツクツクボウシ?
 今週の初めでした。その日は午後一杯、外にいました。一応は「お仕事」だったのですが、結構暇があったので近くにあった大きな松の木・・・少なくとも私の年齢よりは上の樹齢の・・・の周りをうろうろして、時折吹く風で揺れる様子を眺めたり、下の枝の松葉をちぎって(ごめん)、改めて松葉の先端の堅さと鋭さに驚いたりしながら、日が沈んで薄暗くなる頃まで時を過ごしていました。夕方が近づく頃になるとその松の木の高い枝の辺りからカナカナカナという蝉の声が聞こえてきました。ヒグラシ(カナカナゼミ)の声です。更に聞いていると、ツクツクボーシ、ツクツクボーシとツクツクボウシの声も聞こえてきます。夏の終わりを感じさせる秋の蝉の声ですね。ヒグラシもツクツクボウシも、昼間もきっとせっせと鳴いていたのでしょうけれど、昼間の暑い時期には、まだ残る夏の暑さを感じさせるアブラゼミやミンミンゼミの「ジージージージリジリ」や「ミンミンミン」という夏蝉の声にかき消されて気がつかなかったのでしょうか。あるいは、私自身の脳内で「暑いときには夏の蝉」「涼しくなったら秋の蝉」と自分の感覚に合わせて蝉の鳴き声もフィルタリングされてしまってるのかもです。

◇「寒蝉」はヒグラシ?
 七十二候の立秋の次候に「寒蝉(ひぐらし)鳴く」というのがあります。今年(2021年)でいえば8/12~17の候ですから、私が松の木の周りをうろうろしていた日は、ちょうどこの候の内でしたから、私がヒグラシの声に反応したのは「かわうそ@暦」を名乗る以上は当然といえば当然でしょうか?さてさて、この「寒蝉鳴く」ですが、こよみのページでは明治時代の略本暦に取り上げられている、日本風にアレンジされている本朝七十二候を基本にしていますが、「寒蝉鳴」と言う言葉は中国から最初に伝わった七十二候がから既に存在した言葉、由緒正しい(他がそうじゃないとはいいません)言葉です。ただし、本朝七十二候での読みだけは「かんせん なく」のままではなくて寒蝉(ひぐらし)鳴くと「寒蝉」は「ひぐらし」としています。※読みに関しては、いろいろと違ったバージョンもあるので、その一例だということをご了承願います。ちなみにいつもお世話になっている広辞苑を引くと

 【寒蝉】(かんぜみ)
  秋の末に鳴く蝉。ツクツクボウシまたはヒグラシの古称か。《広辞苑・第六版より抜粋》

 と有ります。すると、私が松の木の周りで秋を感じていたヒグラシでもツクツクボウシでもどちらでもOKってことですね。短い言葉で端的にその季節を表現する七十二候の語感からすると

  寒蝉(つくつくぼうし)鳴く

 では若干、字余り感があるので、どちらでもいいなら「ひぐらし」に軍配を上げたいですが、いいかな?

◇案外早い、ヒグラシの鳴き始め
 セミの初鳴きの日や桜の開花日などは季節の変化を知る上で有用ですので、現在でも「生物気象」としてその記録が各地の気象台で記録されています。(七十二候の多くも今でいえば生物気象の指標ですね)こうした生物気象のデータをほぼリアルタイムに集めてくれている便利なサイトがありました。

 生物季節観測データベース(リアルタイム更新)http://agora.ex.nii.ac.jp/cps/weather/season/

 こちらの項目を眺めると、ミンミンゼミ、ヒグラシ、ツクツクホウシ、アブラゼミ、クマゼミ、ニイニイゼミと多くの「セミ」の初鳴きデータがあります。本日見たところでは2020年の初鳴きデータが並んでいますが、それを見ると、ヒグラシの初鳴きは8月上旬(京都 8/8,横浜 8/3)。ふむふむ。立秋が 8/7だから、そんなものか。では、「字余り感がある」と失礼なことを言ってしまったツクツクボウシはと見ると、こちらは若干遅く8月下旬(名古屋 8/26,甲府 8/19)。あら、こちらの方がより「秋を告げる蝉」らしいかな・・・。実のところ、このサイトで夏蝉の代表格、ミンミンゼミの初鳴きの時期を見ると、これがヒグラシの初鳴き時期と大差ない。ちょっと困っちゃいますが、ヒグラシの場合はあの「カナカナカナ」というどこかもの悲しいような、淋しいような鳴き声が秋を思わせるから、秋を告げる「寒蝉」にヒグラシを擬したのかな?自分の感覚から書き始めたこの話ですが、初鳴きデータだと、ヒグラシも夏の蝉のようですね(ツクツクボウシは秋の蝉でよさそうですけど)。もっとも、あのもの悲しい鳴き声で「秋」を感じてしまうのは、どうやら私だけでは無さそうで、俳句歳時記もで

  アブラゼミ・ミンミンゼミ ・・・ 夏の部
  ヒグラシ・ツクツクボウシ ・・・ 秋の部

 に入っておりました。さてさて、皆さんの「寒蝉鳴く」の寒蝉はどの蝉でしょうか。ヒグラシでもツクツクボウシでも、どっちでもいいかな?(「2021/08/21 号 (No.5439)」の抜粋文)

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