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【蕗の薹】(ふきのとう) [日刊☆こよみのページ]

【蕗の薹】(ふきのとう)
 (「蕗の塔」からか)春の初めに蕗の根茎から生え出る花茎。ふきのじい。ふきのしゅうとめ。春の季語。文明本節用集「款冬、フキノタウ」 《広辞苑・第六版》

 七十二候、大寒の初候は「蕗のとう花咲く」ということで、本日は蕗の薹について採り上げてみることにしました。蕗は山野の路傍に普通に生えている山菜。どちらかと言えば湿り気のある場所が好きで、蕗が沢山在る場所の傍には水の流れがあることが多いものです。蕗の古名は「山生吹(ヤマフフキ)」。山から命が吹き出すように生まれるということから付いた名前と考えられます。大地から芽吹く蕗の姿をよく現した名前です。その古名から「ヤマ」と「フ」が外れて現在の「フキ」となったようです。蕗は早春に葉より先に薄緑の苞に包まれた卵形の蕾を地面から出します。この蕾が、時にはまだ地面を覆う残雪を押しのけるようにして、その姿を現したものが蕗の薹です。蕗の薹は、やがてこれを覆っていた苞を破って花穂を現します。花穂が顔を覗かせる前の苞に覆われた状態の蕗の薹が、早春の山菜として親しまれるフキノトウです。蕗の薹が山菜として親しまれる理由は、その苦みのある独特の味ばかりではなく、蕗という名が「富貴」に通ずる嘉祥植物として、蕗の薹の芽吹く時期に訪れる旧正月の祝いの膳に欠かせないものだったということの名残もあるのではないでしょうか。ちなみに、山菜として食べられてしまう蕗の薹からすれば危険な時期を乗り越えて無事に花を咲かせた蕗の薹の花には、白と黄色の花色があることはご存じ? 実は、蕗の薹は雌雄異株で、雄花の花色は黄色、そして雌花の方は白色です。子供の頃は「種類が違うの?」と思ったりしていましたが、花色の違いは雄花と雌花の違いでした。もし、早春の珍味として食卓に上ることを免れ、花を咲かせている蕗の薹を見かけることがあれば、雄花か雌花かどちらだろうと、のぞき込んでみてくださいね。もっとも、まだしばらくは、蕗の薹たちにとっては危険な季節が続きますけどね。なお、蕗の葉っぱの方は、蕗の花の季節が終わる頃に、ようやくその姿を現します。目にする時期も姿も大分違うので、蕗と蕗の薹は別物と思っている方もいらっしゃるようですが、同じ植物ですよ(念のため)。

                          (「2024/01/23 号 (No.6324) 」の抜粋文)
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