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【連翹】(れんぎょう) [日刊☆こよみのページ]

【連翹】(れんぎょう)
 モクセイ科の落葉低木。中国の原産。古くから観賞用に栽培。高さ約 2メートル。枝は長く伸びて先端はやや垂れる。早春、葉に先だって鮮黄色・ 4弁の筒状花を開く。中国から輸入された別種のシナレンギョウもまれに栽培。欧米ではこれらの園芸品種を栽培。果実は生薬の連翹で、消炎・利尿剤。イタチグサ。春の季語。〈書言字考節用集〉 《広辞苑・第六版》

 連翹は三月~四月頃に黄色の花を咲かせます。同じ黄色でも山吹などより明るい黄色。広辞苑の説明では連翹は中国原産とありますが、連翹の仲間は東アジアに広く分布しており、日本にも自生する種(ヤマトレンギョウとショウドシマレンギョウの2種)もありますが、花の分量は大分少なめです。辞書にある中国原産の連翹は、渡来植物とはいえ、既に出雲風土記にも記述があるとのことなので、日本への渡来は大変古いものだと分かります。連翹の実は生薬となり、薬として朝廷に献上されたことが延喜式に書かれていることから、その効能もも古くから知られていたことが分かります。その生薬としての効能から輸入されることになったのかもしれません。連翹の花は葉が出るまえに咲きますので、離れてみると黄色一色の塊に見えます。にぎやかな黄色の花が春のわくわくする感じをよく表わしてくれる花です。連翹の花が盛大に咲いている場面を思い浮かべると、なぜかいつも日当たりのよい土手などの傾斜地がセットで思い出される、平地で咲いているイメージがわきませんが、水はけのよい場所を好む植物なのかもしれません。そして先日、車で川沿いの道を走っていると、陽の当たる河原で元気に黄色い花を咲かせている連翹の一群を発見しました。春がやってきたことを実感した瞬間でした。ちなみに彫刻家の高村光太郎の忌日は「連翹忌」と呼ばれます。彼が連翹を大変好んだことによると言い、彼の告別式には、棺の上に連翹の一枝が置かれていたとのこと。連翹忌の日付は4/2、その日付まであと半月ですね。

                          (「2023/03/17 号 (No.6012) 」の抜粋文)
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菜虫蝶と化す [日刊☆こよみのページ]

□菜虫蝶と化す
 今日は七十二候、「菜虫蝶と化す」の期間の始まりの日です。「菜虫(なむし)蝶と化す」は二十四節気の啓蟄の末候。地中から虫たちが姿を現し始める啓蟄の期間の終わりには、地中から姿を現した虫が、蝶になってゆくのですね。もっとも、蝶にかわる青虫などは土から出てくるわけではありませんけれど。私個人の体験からすると、蝶がひらひらと舞う季節というのはもう少し先のような気もしますが、早起きで働き者の虫はもう蝶となって、菜の花畑を飛び回っているのかも知れません。菜虫の時期と、蝶の時期にはふれられているけど、その間にある、さなぎの時期は?なんて話はここでは忘れて、この時期には蝶が姿を現す時期なんだなと、暦の話として受け入れて頂きましょう。
 
◇夢見鳥(ゆめみどり)
 菜虫から姿を変えた蝶は、またの名を「夢見鳥」ともいいます。「夢見鳥」の名は、荘周胡蝶の夢の故事に由来します。昔、荘周(荘子)が夢の中で蝶となり、花と花の間を楽しく飛び回った。蝶となって花々の間を飛び回っている間、荘周は蝶そのものであって、人間の荘周が夢で見た存在だとは思いもしなかった。夢から覚めて、荘周は自分が人間であったと思い出したが、そこでふと疑問が湧いた。夢の中で蝶であったとき、自分は蝶そのもので、人間の夢の中の存在だなととは露ほども思わなかった。今、夢から覚めた自分は、人間だと思っているが、それは本当だろうか。もしかしたら、人間荘周だと思っている自分は、蝶の見た夢の中の存在なのかも知れないと。辛いことも楽しいこともありながら、長いこと生きてきたと思っている私の人生も、もしかしたらどこかの菜の花の上で、ウトウトしている蝶の見た長い夢なのかも知れません。

◇「菜虫蝶と化す」時期は?
 七十二候の「菜虫蝶と化す」の期間は、今年は3/16~3/20の間ですが、実際の蝶と化す時期は?1995年に出版された「気候図ものがたり」という本に、気象庁のモンシロチョウの初見の日付が書かれています。その日付によれば、

  鹿児島 3/6 , 福岡 3/16 , 高知 3/8 , 鳥取 3/25 , 広島 3/17 ,
  大阪 3/31 , 京都 3/26 , 名古屋 3/27 , 長野 4/3 , 前橋 3/30 ,
  新潟 4/9 , 仙台 4/5 , 青森 4/22 , 札幌 4/26

 だとか。なるほど、七十二候の「菜虫蝶と化す」の日付は、実際の蝶(ここではモンシロチョウ)の初見の日付と合致しているといってもよさそうです。ちなみに、「気候図ものがたり」のモンシロチョウの初見の日付の一覧には那覇と東京の名前もありましたが、どちらも日付の欄は「-」となっていました。那覇は温かいので一年中モンシロチョウが飛んでいるから「初見」がないのか?東京に初見の日付が無いのは、調査の対象項目にないからでしょうか?

◇暦の上の季節感と個人の季節感
 先に、個人的体験では蝶がひらひら舞う季節というのはもう少し先のような気がしますとしましたが、私の生まれは福島県ですので、それに近い仙台のモンシロチョウの初見の日を見ると、 4/5。暦の「菜虫蝶と化す」の時期と、私の感覚がずれているのは、私の感覚が子供時代を過ごした東北の気候にあわせて形作られたものだからのようです。みなさんの感覚での蝶の舞う季節は、七十二候の「菜虫蝶と化す」と合致していますか?ご自分の感覚と暦の日付の差から、自分の感覚が形作られた過程を振り返ってみるのも、暦の楽しみ方の一つかも知れません。

                          (「2023/03/16 号 (No.6011)」の抜粋文)
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【下萌え】(した もえ) [日刊☆こよみのページ]

【下萌え】(した もえ)
 人目につかず芽ばえること。また、その芽。続拾遺和歌集春「下萌え急ぐ野辺の若草」
  《広辞苑・第六版》

 一面の枯野に仄かに緑の色が混じる季節となりました。春の訪れとともに冬枯れした草の下から新芽が芽生え、その緑が顔をのぞかせているのです。名前さえ知らない道端の草の芽でも、その初々しい緑には目を惹かれます。まだ春の浅い時期ですから枯野の上に雪が残っている地方も多いことでしょうが、そうした地方でも雪の下では枯草に守られて若い緑が芽吹いているかも。雪が融けて枯草とその根元の緑が姿を現すのも間近です。下萌えの緑は、春の訪れと、そしてなにか新しい希望の訪れのようなものを見るものに感じさせてくれます。「何かいいことが起こりそう」下萌えの緑を目にすれば、なんだかそう思えてきます。

                          (「2023/03/01 号 (No.5996)」の抜粋文)
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