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「菊の節供」に「菊の花」の話 [日刊☆こよみのページ]

■「菊の節供」に「菊の花」の話
 今日は旧暦の九月九日。「九月九日」といえば、重陽の節供の日付。つまり本日は、旧暦時代であれば重陽の節供の日と言うことになります。重陽の節供といえばその別名は「菊の節供」。菊の節供という呼び名はもちろん菊の花が咲く季節の節供であることからです。菊の花の咲く頃といえば、やはり今ぐらいの季節ですね。

◇菊は渡来植物
 菊(栽培される菊。『家菊(イエギク)』ともいう)はすっかり日本の花という感がしますが、菊の花は中国からの渡来植物だそうです。菊が何年に日本に渡来したかははっきりしませんが、八世紀半ば頃だろうと考えられています。その根拠の一つが万葉集の歌の中に菊の花が登場しないこと。万葉集の歌のうち、年代のわかっている歌で最後のものは AD759年だそうですが、この時期には菊は渡来していないか、渡来していたとしても和歌に詠われるほど、普及してはいなかったということでしょう。現在知られている和歌の内で、菊を詠った歌の最初は、

   この頃のしぐれの雨に菊の花散りぞしぬべきあたらその香を

 だそうです。これは AD794年の桓武天皇の歌。この頃には少なくとも天皇や貴族は菊の花を目にし、菊の香りを楽しんでいたことがわかります。

◇菊は長寿の薬
 菊は漢方薬としてよく効く薬、「上薬」に分類されます。その効能には「耐老延齢」があるとのこと。中国の伝説には、菊の花に宿った水をすすり、数百歳の長寿を得た人物の話があります。重陽の節供の菊酒や、着せ綿によって菊についた夜露を吸い取りこれを口にする風習はこの中国の伝説にある延齢効果にあやかりたいという行事なのですね。私も大分いい年になってきてしまいましたので、そろそろ菊の延齢効果にあやかろうかな?

◇菊の花は日本の国花?
 海外への渡航がごく普通の旅行となりつつある現在ですから、パスポートを目にする機会も増えました。そのパスポートの表紙にあるのは、十六弁一重の菊の花の紋章。日本を代表する紋章として菊が使われるわけですから菊が国花だと思ってしまいがちですが菊の花は国花ではありません。パスポートの表紙には、その国の紋章、あるいはそれに準ずる紋章を入れる国際慣行があります。日本には法的に定められた国章はないので、パスポートの菊の紋章は、国章に準ずる紋章として国を代表する花の一つである菊を図案化したものだそうです。菊の御紋といえば、皇室の御紋章かというと、皇室の御紋章は菊花十六弁までは同じですが弁と弁の間から背面(?)の弁の先端が覗いた八重菊を表す複弁の紋章なので、十六弁一重のパスポートの紋章とは異なっています。よく見ないと、気が付きませんが。ついでに、国花の話が出たついでに、菊が国花でないとしたら、日本の国花はなに? 桜? 正解は、「法律で定まった国花は無い」でした。身も蓋もない話でした。国花が無いので、皇室の紋章となっている菊の花をデザイン化して国章に代わるものとしたようです。最後の話は暦とは関係ありませんが、「菊の節供」にまつわる話として採り上げてみました。

※日本自生の菊
 本日は「菊」、特に栽培される家菊の話でしたので「菊は中国から渡来」としましたが、日本にも西日本や四国に自生する野路菊(ノジギク)があります。以前は家菊の原種かとも考えられたことがあるそうですが、中国にはこの種の菊の自生が確認されていないことから、家菊の原種説は否定されているとのことでした。以上、ちょっとおまけの「菊の話」でした。

                          (「2023/10/23 号 (No.6232) 」の抜粋文)
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【榾木】(ほたぎ) [日刊☆こよみのページ]

【榾木】(ほたぎ)
 1.「ほた」1 に同じ。
 2.椎茸(しいたけ)・なめこ・ひらたけなどを栽培するために伐った椎・栗・櫟(くぬぎ)などの木。 《広辞苑・第七版》

 語釈1に『「ほた」1に同じ』とありますので「ほた」もひいておきます。

 【榾】(ほた)
  (ホダとも)
  1.囲炉裏(いろり)にくべたり焚火などにしたりする木の切れ端。ほたぐい。冬の季語。
   山家集「山深み榾伐るなりと聞えつつ所にぎはふ斧の音かな」
  2.大きな材木。また、地面に倒れている朽木。〈日葡辞書〉 《広辞苑・第七版》

 榾に関しては1だけでよいわけですが、調べたついでなので2まで書いてしまいました。そうか、地面に倒れている倒木も榾というんだと、一つ余計に言葉を知ることが出来て、得した気分になったので。さて、本日この「榾木」という、ちょいっとマイナーな言葉を採り上げたのは、少し前に「ほだぎ」が広辞苑の見出し語にない!ことを発見して驚いたからでした。でも「ほだぎ」じゃなく「ほたぎ」という見出し語がありました。慌て者で済みません。わたしはずっと「ほだぎ」というのだとばかり思っていて「ほたぎ」で辞書を引く発想がなかっただけのことでした。慌て者だなと思いながらも「ほだぎ」でインターネット検索すると、沢山ヒットする(というか「ほたぎ」より沢山ヒットする)ので「ほだぎ」も結構一般的な言葉となっているようです。そんなわけですので広辞苑さん、第八版にはせめて

  ほだぎ → ほたぎ

 くらいの扱いで「ほだぎ」も見出し語に加えてもらえるとうれしいです。広辞苑に無理なお願いを書いたところで話を榾木に戻します。田舎に暮らしていると、この榾木を林の中などで時々見かけます。主に椎茸を栽培するために使われているもので、椎茸原木などととも呼ばれます。最近はこの榾木に椎茸などの菌駒を打ち込んだものが販売されていて

  ほた木 椎茸

 などの検索語で検索すると沢山の通販サイトとそのサイトで販売されている榾木の写真がヒットします。興味のある方は検索してみてください。写真をみれば「あ、これが榾木か」と思う方も結構いらっしゃるとおもいます。こんな菌駒の打ち込まれた榾木を購入すれば自宅でも手軽に椎茸が育つ様子を観察することが出来ます。観察を楽しんだ後には収穫する、調理して食べるという楽しみまでついてきます(私は、最後の「食べる」楽しみは辞退しておりますが)。我が家では、お風呂場の窓辺に榾木をおいて、次々に椎茸が芽吹き(?)、育つ様子を楽しみました。お風呂場の温度、湿度が椎茸の生育にちょうど良いみたいです。家庭菜園よりずっと手軽な家庭での椎茸栽培。

                          (「2023/10/20 号 (No.6229) 」の抜粋文)
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寒露 [日刊☆こよみのページ]

□寒露
 今日は二十四節気の一つ、寒露の節入り日です。寒露は九月節で、節切りの暦ではこの日から九月となります。旧暦では暦月3ヶ月毎に季節を分けて考えており、七~九月が秋の季節とされておりましたので、九月といえばもう秋も終わりの月、晩秋の月となります。もうそんな時期なんですね。江戸時代に出版された暦便覧という本では寒露(かんろ)を

  陰寒の気に合って、露むすび凝らんとすれば也

 と説明しています。このころになると秋もその深さを増して、朝夕は草の上に冷たい露を結ぶようになるということですね。朝、散歩(たまにしかしませんけど)をしていると、確かに草の葉には露が結んでいます。夏草に結ぶ露ならば、露に濡れても暑さを凌ぐ一助ともなって心地よいものですが、寒露の頃の露に触れれば冷たさに思わず身震いしてしまいます。

◇金生水(きんしょうすい)
 五行説では秋は金気、つまり金属の性質を持った季節とされています。金属は、触れば堅くて冷たいものです。金属のこの「堅い」という性質から、秋は堅い木の実(栗やどんぐり、椎の実など)、穀物の実(稲や大豆)が実る季節なのだと古代の人々は考えました。また、ひんやり冷たい金属の表面には露がつきやすいことから、金属は水を生み出す性質があるとも考えられました。ですから五行の金気は金生水(金、水を生ず)と説明されます。このように考えると、金気の季節である秋に二十四節気の内で「露」の着く白露や寒露という名の節気が配されている理由が分かります。秋は、実りをもたらすとともに、大気を冷やして水を生み出す季節なのですね。

◇秋も終盤
 寒露は暦の上の秋の始まり、立秋から数えて60日目頃。一年を四季に分割すれば、一つの季節の長さはおよそ90日ほどですから、秋も終盤と云うことが出来そうです。このころになると菊の花が咲き始め、秋野のにも様々な花を見ることが出来ます。山の木々の葉はそろそろ紅葉の準備に入るころですし、足下の草露は冷たいですけれど、目には楽しい時期といえそうです。さて、寒露を過ぎ更に寒さが増して行けば、やがて冬がやってきます。冬は五行説では水気の季節。金気の秋が草の上に露を結ぶことを繰り返すと、やがて水気の冬が来る。古代の人々はこうして四季が交替して行くと考えたのでしょう。とっても単純な考えですけれど単純だからこそでしょうか、妙に納得できるものがありますね。季節がこうして移り変わってゆくというのはすてきですが、出来ればそんなに早く冬を呼ばなくてもいいと思うのですけどね。最後は寒がりかわうそのぼやきで終わる寒露の話でした。

                          (「2023/10/08 号 (No.6217) 」の抜粋文)
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【郁子・野木瓜】(むべ) [日刊☆こよみのページ]

【郁子・野木瓜】(むべ)
 アケビ科の常緑蔓性低木。暖地に自生。5~7枚の厚い小葉から成る掌状複葉。5月頃、白色で淡紅紫色を帯びる花を開き、佳香がある。暗紫色のアケビに似た果実を結ぶが開裂しない。甘く食用。茎・根などは利尿剤。トキワアケビ。うべ。秋の季語。「郁子の花」は春の季語。〈倭名類聚鈔17〉《広辞苑・第六版》

 秋になると赤紫の楕円形の実が生ります。実は近縁のアケビ(通草)とよく似ていますが、アケビよりやや小ぶり。ただしアケビの実にも小さなものもありますから大きさだけでは区別が難しいのですがアケビとの大きな違いは、実が熟しても口を開かないこと。アケビと違って口の堅いムベです。晩秋には葉を落としてしまうアケビと違って、ムベは常緑。また、芽生えた頃には三葉の葉をつけるのに、その生長に従って葉の数が五葉、七葉と変化することから「七五三」の縁起のよい植物ということで、庭に植えられることもあります。冬にも葉を落とさないことからトキワアケビもと呼ばれます。野生では関東以南の、比較的海に近い場所に好んで自生します。私の生まれ故郷は東北でしたから、アケビはなじみの秋の果実でしたが、ムベの方は関西の海辺の街で暮らすようになってからです。現在、私の自宅は紀伊半島の南端部にほど近い和歌山県の那智勝浦町にあり海岸まで徒歩10分の距離。裏山までの距離はといえば徒歩2分。こんな立地ですので、徒歩2分の距離の裏山の縁辺部にも野生のムベの蔓があり、毎年秋になると、赤紫の実をなる姿を目にします。今年の実りの具合はと見に行けば、雑木の枝葉と蔓の葉の間に熟す前の青い実が5つ、6つ、ぶら下がっているのが見えました。熟すまでにはあと半月程でしょうか。ムベの実の色の変化と共に、秋が深まって行くのでしょう。

                          (「2023/10/05 号 (No.6214) 」の抜粋文)
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