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「品川の海岸産」の夏野菜の話 [日刊☆こよみのページ]

□「品川の海岸産」の夏野菜の話
 昨日、練習帰りに立ち寄ったスーパー銭湯のサウナ室で見たTV番組で、ナスが採り上げられていました。真っ白な「トルコナス」というもの。白い茄子ということに違和感を抱きつつ、茄子食べたいなと思って、家の近所のスーパーで紫色の慣れ親しんだナスを買って、昨夜の遅い夕食は麻婆茄子になったかわうそです。本日は昨日食べた野菜、ナスとお盆から思いついた河村瑞賢(江戸時代の豪商)の話です。

◇お盆の「ナス」といえば
 お盆の時期にナスといえば、思い出すのはナスの牛。キュウリの馬と共にご先祖様の送迎に活躍するあのナスの牛です。ご先祖様を載せるキュウリの馬とナスの牛ですが、それぞれにその特徴に応じた役割分担があります。

  キュウリの馬は迎え係
  ナスの牛は送り係

 この役割の違いはその歩みの速度の違いによります。盆に帰ってくるご先祖様を一刻も早くお迎えしたいので迎えには足の速いキュウリの馬。お帰りの際は名残惜しいのでゆるゆるとした歩みで遠ざかるナスの牛というのがこの役割分担です。もうお迎え係のキュウリはそのつとめを果たしたことと思いますので、あとはナスの牛。たっぷりと道草を食いながらゆっくりとご先祖様の霊をあの世へ送りとどけてくださいね。

◇品川の海岸産のナス・キュウリ?
 お盆の明けた頃、キュウリ、ナスといった夏野菜を元手に一財産作った人物が河村瑞賢。江戸時代初期の人物です。河村瑞賢は伊勢の国(三重県)の貧農の家に生まれ、一旗揚げようと江戸に上ってきた人物です。後に豪商としてしられることになる河村瑞賢がその巨万の富を築くきっかけになったのがナスやキュウリの漬け物の売り歩きでした。若き日の瑞賢が売り歩いたナスやキュウリの産地は品川の海岸。何とも不思議なナスやキュウリです。

◇モッタイナイ精神の権化
 盆明けのある日、品川の海岸を歩いていると、海岸には盆の精霊流しで流された沢山のキュウリやナスが流れ着いていました。キュウリの馬やナスの牛の成れの果てです。これを目にした瑞賢はひらめきました。この品川の海岸産のキュウリやナスは売り物になると。そのままではただのゴミですし売り物になるわけもありませんが、漬け物にしてしまえば十分に商品価値がある(拾いもので作ったとはまさか誰も思わない?)。瑞賢はその辺にいた乞食達にいくらかの金を与えて、早速これを拾い集めさせて塩漬けにし、普請場を回りこれを普請場の人夫に安く売りさばきました。「安く売った」もなにも、原材料費はただみたいなものですね。それに江戸時代の初期には、江戸の町並みを整えるために江戸中に沢山の普請場がありましたから、商売をする場所はいくらでもある。大儲けです。瑞賢はこれで得た儲けを元手にしてやがて巨万の富を築き、さらには淀川河口の治水工事や、その他様々な開拓開墾にその手腕を発揮して成功させていきます。やがては幕府からもその功を認められて旗本に列せられるまでになった、まさに立志伝中の人物です。さすが、こんな人物は物を無駄にはしない。目の付け所が違う。このナスやキュウリの漬け物の話などもまるでもったいない精神の権化のようではないですか・・・。でも漬け物を買った人たちはその原材料が品川の海岸産だとその素性を知っていて買ったとは思えませんがね(知ったとしたら瑞賢がどうなっていたかは考えたくないですね)。(「2020/08/16 号 (No.5069)」の抜粋文)

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