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女郎花のことなど [日刊☆こよみのページ]

□女郎花のことなど
 本日は生まれ故郷の福島県郡山市からの日刊☆こよみのページです。東北地方に属する福島県は、流石に現在住んでいる紀伊半島の先っぽに比べると秋の訪れが早いようです。そんな秋の雰囲気を感じながら歩いていると今を盛りと咲いている女郎花を見かけました。女郎花といえば、秋の七種(七草)の一つに数えられる花。暦のこぼれ話としては苦しいですが、まったく無関係とも言えないだろうと、本日はやや無理やり「女郎花」についての雑話を書くことにしました。さてさて、本日取り上げた女郎花、秋の七種の一つではありますが、飛び抜けて美しい花というわけではありません。また華やかな花でもありません。一本だけポツンと花瓶に活けて絵になるかと考えると、それもまた微妙な感じです(この辺は主観の問題ですけど)。でもこんな、地味ともいえる花が秋の草花を代表する秋の七種に選ばれていることはうれしいですね。さてこの黄色の素敵な花はその名前は「女郎花」。

  「女郎花、さて何て読むでしょうか?」

 そんな風にクイズにされるくらい、読みにくい名前です。どうしてこの文字で「おみなえし」なんて読めるのでしょう。それに「おみなえし」ってどんな意味だろうなんて疑問に思ったことはありませんか?クイズに出されるくらいと書いたついでにもう一つ書けば、この女郎花には近縁種に白い花をつける植物があります。名前は「男郎花」。さてこちらは何て読むでしょうか? 答えは「おとこえし」。女郎花に男郎花。そろいもそろって不思議な名前ですね。何でだろうと思ったものですが、湯浅浩史の植物ごよみという本に見事な謎解きが書かれていました。湯浅氏の謎解きは女郎花の方言名から始まります。女郎花の方言名には

  粟花(あわばな)、粟穂(あわぼ)、粟盛り(あわもり)、女飯(おんなめし)

 粟が付く名は女郎花の黄色く小さな粒々のある花から粟を蒸し上げた姿を想像したものでしょう。ここまでは直ぐ解る話ですが、最後の「女飯」は?ここで登場するのが先程紹介した女郎花の近縁種の話。女郎花が「女飯」なら、男郎花は「男飯」。湯浅氏の謎解きはここから。女郎花の黄色い花は粟飯を盛った姿、ならば白い男郎花はというと、白米を盛った姿。粟も米もいずれも五穀の一つですが粟は米より低く評価されていました。それで、米の飯を「男飯」、それより評価の低い粟の飯を「女飯」と呼んだのだというのです(今だったら「男女差別だ」と問題になりそう・・・)。なるほど、それで

   女飯(おんなめし) → 女郎花(おみなえし)

 うむ、それなら女飯と粟花や粟盛りという名前との関連も納得いきます。思わず、膝を叩いてしまう説でした。もちろん数多の説のひとつですがうなずいてしまいますね。ちなみに、黄色の花の女郎花と、白色の花の男郎花は交配可能な近縁種。なので、女郎花と男郎花の両方があるような場所には、両者のハーフともいえる自然雑種の姿を見ることもあります。この女郎花と男郎花の間に生まれた植物の名前は

 男女郎花 (おとこおみなえし)

 嘘みたいな本当の名前です。わかりやすいといえばわかりやすいのですが、なかなかストレートなお名前。名前考えるのが面倒だったのかな?女郎花が粟飯で、男郎花が白米の飯なら、男女郎花は雑穀飯? 健康志向の昨今には人気が出るかもしれませんね。女郎花は栽培される花というイメージで、私自身は野原で野生の女郎花というものを見たことがありません。この記事の冒頭に登場した女郎花も人様の家の庭に咲いているものでした。大分過ごしやすい季節になりましたし、暇を見つけて黄色や白色や、混ざったものが無いか、探しに出かけてみようかな。

                          (「2023/09/10 号 (No.6189) 」の抜粋文)
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