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【秋津】(あきつ) [日刊☆こよみのページ]

【秋津】(あきつ)
 (平安以後アキツとも)トンボの古名。秋の季語。古事記(下)「手腓たこむらに虻あむかく着き、その虻を秋津早咋はやぐひ」 《広辞苑・第七版》

 トンボは蜻蛉と書きます。といってもいきなりトンボと言われて「蜻蛉」と書ける人は少ないと思います(少なくとも私は書けません)。書ける書けないはひとまず置くとして、蜻蛉と書いても「あきず」あるいは「あきつ」とも読むことがあります。秋津または、蜻蛉の文字に「洲」あるいは「島」を付けると「あきつしま」となり、日本の古い呼び名となります。日本は秋津洲。トンボの国がその名になるほど、沢山のトンボがいた国なんですね。秋津の虫と言われるトンボですから、秋になって増えてきそうですが、近頃は、あまりトンボの姿を見ることがありません。自分が子供時代なので、もう半世紀ほど昔のことになってしまいますが、生まれ育った福島県の片田舎では石を投げたらトンボに当たるくらい、沢山の赤とんぼが、田んぼの上の秋の空を埋め尽くす風景が、秋になれば当たり前に見られたものです(実際に石を投げても、トンボが素早く避けるので、滅多に石は当たりませんでした)。あんなに沢山のトンボはどこから現れて、どこに消えて行ったのでしょう。あの時代から半世紀あまりが経過して、現在私は日本海に面した地方都市に住んでいます。「都市」とはいっても、規模が小さいので、中心部をほんの少し離れると、子供時代に眺めたような田んぼの拡がる風景を目にすることが出来ます。でも、その田んぼの上を埋め尽くすような赤とんぼの姿を目にすることはありません。どこに行ってしまったのかな?夕焼け小焼けの赤トンボと童謡に唱われた赤トンボが今では絶滅が危惧される生物となってしまったとか。このままトンボがいなくなってしまったら、秋津洲と言われた日本の名前も返上しなければならなくなってしまいます。今の子供達に、そして未来の子供達にも「日本は秋津洲、トンボの国なんだよ」と語ってあげられるようにしたいものですね。

                        (「2022/09/24 号 (No.5838) 」の抜粋文)
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