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地始めて凍る(七十二候) [日刊☆こよみのページ]

□地始めて凍る(七十二候)
 立春から次の立春まで一年を72に細分した七十二候も第56候「地始めて凍る」となりました。二十四節気は中国から伝来したままの姿ですが、七十二候は日本化が進んで中国から伝来した頃のままのものは少なくなっていますが、地始めて凍るはその少なくなったものの一つです。七十二候の言葉の日本化が進んだのは、七十二候の言葉の多くが天文現象や暦学的な意味の言葉ではなくて、ずっと私たちに身近な身の回りの動植物の生育の度合いや、気象現象を表す言葉によってしめられていると考えられます。中国の大陸内陸部と海に囲まれた日本との違いは大きく、そのままでは違和感が大きすぎたため、日本化が進んだと思われます。二十四節気や七十二候が生まれた中国の内陸部(現在の中華人民共和国山西省太原市付近)と長く日本の都があった京都付近の11月中旬の平均気温を比べて見ると -1℃と 9℃と10℃ほども違いがあります。こんなに気温が違っていては、身の回りの様子も大分違っていて当然です。

◇「地始めて凍る」はなぜ生き残った?
 では今の時期、一日の平均気温が10℃も違う中国内陸部で生まれた七十二候の中で「地始めて凍る」が使われ続けたのはなぜでしょうか?不思議な気がしたので、考えてみました。まず、本家中国の話しですが、先程の太原市付近の現在の一日の平均気温は大体-1℃ほどです。平均気温が-1℃ということは、一度凍った氷はほとんど一日中融けることなく凍っていることになります。あとは、春まで凍りっぱなしというところでしょうか。これなら「地(地上)始めて凍る」と言いたくなる気持ちもわかります。では太原市付近より10℃も平均気温が高い日本(ひとまず日本代表は京都と考えます)で、なぜこの言葉が生き残ったのか?もしかすると「始めて凍る」という言葉を「始めて氷が張った日」というような意味でとらえたのではないでしょうか。または、「地始めて凍る」から「初霜の日」を連想したのかも知れません(霜が降りた朝の様子を思い浮かべれば、大地が凍ったように見えますね)。そう考えて以前、京都の初氷と初霜の平均日を調べたことがあって、その資料が私のメモファイル集に残っていました。元となったのは京都府のサイトだったのですが、本日確認したところ、既に削除されており、今は見ることが出来ませんでした。残念でしたが、そのサイトがあった頃に書き残したメモによると京都の初霜と初氷の日付の平均は

  初霜 ・・・ 11/15
  初氷 ・・・ 11/28

 こうしてみると初氷の日付では少々遅すぎますが、初霜なら時期的にぴったり。あの霜の降りた地上の姿を見て「地が凍っている」と私と同じ感覚を昔の人も持っていたとしたら、初霜の日を地始めて凍る日ととらえてもおかしなことはありません。この「地始めて凍る」という七十二候の言葉が日本でも定着したのは、ひょっとして「地が凍る」という言葉を本家中国とは違った形で解釈してしまったためではないでしょうか。日本と中国で言葉の解釈が違っていて、その違った解釈の結果、時期は同じでぴたりと暦の中にはまったと考えるとその多くが日本化して言葉の変わった七十二候の中にあって、「地始めて凍る」が生き残った理由が判る気がします(さて、本当かな?)。

◇中国内陸部って、どれくらい寒いの?
 さて、七十二候の生まれ故郷と目される中国の内陸部ってどれくらい寒いのか。11月半ばの日平均気温がおよそ-1℃というのは判りましたが、これではあまり実感がわきません。これに近い、もう少し身近な例は無いかと調べてみると、日平均気温が-1℃というのは、札幌市の12月の値とほぼ同じということが判りました。寒がりな私から見たら、11月の札幌だって「死んじゃうほど寒い所」だと思っていたのに、それより寒くなる12月の札幌並の寒さに11月半ばですでになっているとは。何とも怖ろしい。
「地始めて凍る」が大地が本当にカッチンコッチンになるのを意味する中国の内陸部ではなく、せいぜい霜が降りて大地が凍っているように見えるという日本に生まれて本当によかったと思ったカワウソでした。

※参考までに、昔私の見た京都府のサイトのURLは以下のとおり。
 → http://www.pref.kyoto.jp/noukenkyu/1182477176112.html
 
 記事本文にも書いたとおり、京都府のサイトからは既に削除されてしまっページですが、過去のWeb の姿が保存されているInternet Archiveで該当するURL のページの在りし日の姿を確認できます。先ほど見たら、2011/11/6の状態のこのページを見ることが出来ました。それにしても、どれくらいの分量の記録が残っているのだろう、このアーカイブには・・・(「2020/11/12 号 (No.5157) 」の抜粋文)

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