SSブログ

【星の入東風】(ほしの いりごち) [日刊☆こよみのページ]

【星の入東風】(ほしの いりごち)
 (畿内・中国地方の船人の用語) 陰暦10月中旬に吹く北東風。冬の季語。《広辞苑・第六版》

 船乗りにとって海上での風の急変は恐ろしいもの。そうした関係から、風の名前には船乗り達の用語として生まれたものが数多く有りますが、これもその一つで「星の出入り」とも言う、陰暦十月の頃に吹く北東からの強い風の呼び名です。本日2020/11/23は陰暦で表せば10/9。この風の吹く季節ということになります。

◇星は「すばる」?
 江戸時代の全国の方言を集めた辞書、『物類称呼』は「星の入東風」について次のように説明しています。

  「十月中旬に吹く北東の風を星の出入りといふ。夜明けにすばる星西に入時吹也」

 なるほど、出入りする「星」はすばる(昴)星なんですね。昴は、おうし座のプレアデス星団と呼ばれる天体で、枕草子でも「星は昴」と名をあげられた星(星々)です。肉眼でも4~7個程度の星が集まって見える星団で、「すばる」という名前は星が集まっている星、「統べ(すべる)星」から生まれたとと云われる星です。それぞれの星を見ればあまり明るい星は無いのですが、特徴的で見分けやすい姿からか、古くからよく知られた星でした。昔の船乗り達もこのよく知られた星を航海する際に利用していたのでしょう。これを書いている時期ですと、昴は大体日暮れの頃(17時頃)に東の空から昇り、日の出の頃( 6時半頃)西の地平線(海の上なら水平線)に沈んで行きますから、『物類称呼』の説明のとおり「夜明けにすばる西に入る」のが今の時期と云うことになります。現代風に考えると、この季節には冬の移動性高気圧が接近し、天候が急変することのある季節であると言えるでしょう。それを昔の人はこの季節には、昴星が西に沈む夜明けの頃に、急に風の様子が変わり、北東から強い風が吹き出すことが有るから、気をつけろと昴星の見える位置によって判別していたわけです。天気予報など出来なかった昔の船乗り達の知恵が生み出した知恵、それがこの「星の入東風」なのでした。ちなみに、本日の東京付近での昴星の出没と日出没の時刻は

  昴出 16時20分頃 昴没 6時30分頃
  日没 16時30分  日出 6時24分

 なるほど、確かに。海辺に出かける際には強風に注意ですね。

※参考『物類称呼』(ぶつるいしょうこ 越谷吾山著 1775年刊)

                          (「2020/11/23 号 (No.5168)」の抜粋文)
nice!(0)  コメント(0)