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【蚯蚓鳴く】(みみず なく) [日刊☆こよみのページ]

【蚯蚓鳴く】(みみず なく)
 秋の夜、土中で「じいい」と鳴く声を、ミミズの鳴き声としたもの。実は螻蛄(けら)の声。秋の季語。 《広辞苑・第六版》

 季語には時として不思議な言葉があります。

  「蚯蚓鳴く」 ・・・ 秋
  「亀鳴く」  ・・・ 春

 沢山の動物や虫の鳴き声も季語にはありますが、そうした中で変わったものの双璧はこの二つではないでしょうか。本日は「秋」ですので、この二つの壁のうちの「ミミズ」について採り上げてみることにしました。蚯蚓鳴くなんて季語があると知ったら誰だって、ミミズって本当に鳴くの? どんな声で鳴くの? と考えてしまいますね。残念ながら広辞苑の説明によれば、蚯蚓鳴くとはいいながら本当に鳴いているのは螻蛄(けら・おけら)だとか。「ジーーーーー」と切れ目無く鳴き続けるのが螻蛄の声。この螻蛄の声を蚯蚓の声と考えたようです。螻蛄も地面に穴を掘って暮らしていますから、地中から聞こえる虫の声ということで蚯蚓の声と考えられたのではないでしょうか?それにしても数十年前の日本ならどこでも見かけた蚯蚓、今の都会ですら、雨降りの後などでは見かけることがある、あの寡黙(?)な蚯蚓が「鳴く」なんてどうして考えたのでしょう。『昔々、蛇は歌上手だったが目がなかった。蚯蚓はその歌上手の蛇を訪れ、歌を教えてもらう代わりに目を差し上げましょうと持ちかけました。蛇はこの申し出を受け入れ、蚯蚓に歌を教え、代わりに目を得た。』という昔話があるそうです。もしかしたら蚯蚓が鳴く話はこの昔話から生まれたのかもしれませんね。秋になると土の中から聞こえてくる「ジーーーーー」という声の主が、本当は螻蛄の鳴く声だと判ってはいても、こんな昔話を知ってしまったら、あの声の主が蚯蚓だったらよかったのにな、なんて思ってしまいますね。目と引き替えにしてまでの歌だったのなら。それにしても、蚯蚓は目と引き替えにしてまで、どうして歌が歌いたかったのでしょうね? 昔話はそれには答えてくれません。なんか、切ない気持ちになってしまうのは、秋という季節だからでしょうか?もしどこかから「ジーーーーー」という鳴き声が聞こえることがあったら、歌を歌いたかった蚯蚓の思いを考えてみましょうか。(「2020/09/06 号 (No.5090)」の抜粋文)
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