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【無花果】(いちじく) [日刊☆こよみのページ]

【無花果】(いちじく)
 (中世ペルシア語anji~rの中国での音訳語「映日果(インジークォ)」がさらに転音したもの)西アジア原産のクワ科の落葉小高木、またその果実。葉は3裂掌状、茎・葉を切ると乳状の汁を出す。初夏、花軸の肥大成長した花嚢を葉腋に出し、内面に無数の花をつける。雌花・雄花が同一花嚢中に生じる。食べる部分は実際は花床である。葉は薬用。果実は乾して緩下剤。乳汁は痔の塗布薬、また服用すれば回虫駆除の効がある。

 ザクロ・ブドウとならび、世界的に最も古い果樹の一つ。唐柿(とうがき)。秋の季語
  《広辞苑・第六版》

 自宅の近くに無花果の木があります。先日、通勤の途上で枝の先の実を見あげてふとあれ、そういえばイチジクの花ってどんなだったかな?と思いました。1.5秒後に、「あ!」と気がつきましたけれど。お恥ずかしい。こんなことがあったので、本日のコトノハでは無花果の話を採り上げることにしました。子供の頃、隣の家(といっても直線距離で400mは離れていた)の庭の端に無花果の木が植えられていました。庭の端といいましたが、その家は農家で庭といっても庭と地続きの畑との間には明確な区切りなどありませんでしたから、庭の無花果の木ではなくて畑の中の無花果の木だったのかも知れません。庭か畑かはこれ以上追求しないこととして、とにかく無花果の木があり、子供の私はよくこの木に登って遊んでいました。夏の終わり頃になるとその木の枝の先には変な形をした実が生って、その実の先っぽが赤紫に変わってくれば、実は木に登った子供達のお八つにされてしまいました。甘いけど、なんだか中がざらざらして変な実というのが子供の頃の私の感想です。まさかあの「実」が「花」だったとは。あの一つの花嚢の中には2800もの花が付いているのだとか。ざらざらした中身と見えたものが一つ一つの花だったのです。実だと思っているものが本当は花だったわけですから、この実のような花以外に花はありません。花もないのに実が生るから「無花果」なんですね。さて、無花果の原産地は中東だそうです。地中海沿岸では紀元前2000年頃から既に栽培されていた植物だとのこと、「世界的に最も古い果樹の一」という広辞苑の記述もうなずけます。さて無花果で思い出すのはアダムとイヴが食べたという知恵の木の実の話。この知恵の木の実は無花果だったのではないかと考えられています。だって、知恵の木の実を食べて自分が裸だと気がついて身体を隠すのに使った葉は他ならぬ無花果の葉。無花果の実を食べて、裸の自分に気がついて目の前にあった葉っぱで身体を隠したのでしょう。秋となって、あちこちで赤紫に色付きはじめた無花果の実を見て思い出すのはアダム達が後にした楽園の思い出ではなく、木に登って食べた無花果の実が舌に残したざらざらとした感触だけでした。先日見上げたあの無花果の実(花)は、まだ熟してはいませんでしたが、熟したら子供の頃に戻って、あの舌に残ったざらざらした感触を確かめてみたいなと思いましたが、あの木の実、もいでもいいのかな?(「2020/09/04 号 (No.5088) 」の抜粋文)
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