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【蝉時雨】 (せみしぐれ) [日刊☆こよみのページ]

【蝉時雨】 (せみしぐれ)
 蝉が多く鳴きたてるさまを、時雨の音にたとえていう語。夏の季語。《広辞苑・第六版》

 深閑としているはずの林の中が、夏の一時期だけは喧噪の場と化します。騒ぎの元は蝉の声。林の中だけでなく、お寺や神社、街中でも樹木の多い公園などでは、やかましいほどの蝉の声が聞こえてきます。蝉たちの声は一斉に始まったかと思えば、一斉に止みます。まるで突然降りだす時雨のように。蝉時雨とは言い得て妙な言葉です。やかましい蝉時雨に包まれると、夏らしさを強く感じるためか周囲の気温が2℃、上がったように感じてしまいます。暑い夏をますます暑くしてくれる蝉時雨です。今年は、夏の間もほとんど東京を離れることなく過ごしていたため、本格的な蝉時雨に包まれることもなかったのですが、夏も終わりに近づいた日曜日、久々に猛暑日となったその日の昼下がりに、下町の一角で突然に降り出した、蝉の声に包まれました。そこは住宅街の小さな公園。公園を取り囲む木々から一斉に鳴く蝉の声が聞こえ、公園の中に入ると蝉の声に取り囲まれている感じでした。蝉の命は儚いもの。日曜の公園で耳にした蝉時雨に加わっていた蝉の何割か既にこの世を去っていることでしょう。騒がしく暑苦しい蝉時雨ですが、蝉たちにとっては、生きた証の騒がしさなのですね。蝉時雨の大合唱は合唱団を構成する蝉を替え、蝉の種類を替えながら続いて行きます。間もなく蝉時雨の喧噪も一段落し、鳴く蝉が寒蝉(つくつくぼうし)や蜩(ひぐらし)へと変わると暑い夏も終わります。今年の蝉時雨の季節も、もうすぐ終わりとなりそうです。(「2019/08/23 号 (No.4710)」の抜粋文)
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